私にとって写真とは、心の奥に沈んで言葉にならないものを代わりに語ってくれる存在です。
目の前にふと現れる自然の気配を、飾らず、操作せず、そのまま受け止めたい。シャッターを切るのは「残すため」ではなく、「見つけたよ」と伝えるためなのかもしれません。
私が向き合うのは、壮大な景観ではなく、日常のなかに潜む「親密な風景(Intimate Landscape)」です。
枝先に射す一条の光、水面のさざめき、季節が過ぎゆく微かな痕跡――誰も気づかずに過ぎていく断片の中に、静けさと永遠が潜んでいると信じています。
写真とは、ただ「在る」という事実を写し取る営みです。
偶然に出会った一瞬を受け入れるとき、そこには人為を超えた美しさが立ち現れます。私はその小さな奇跡を拾い上げ、画面に宿すことで、自然と人のあいだに静かな対話を生み出したいと願っています。
もし私の作品を通じて、誰かが「身近な景色の中にも、こんな美しさがあった」とふと立ち止まることができたなら――それこそが、私が写真を撮り続ける理由です。
私にとって写真は、ただ「見せる」ためのものではありません。
それは「いま、この瞬間に出会った美しさをそっと残すための呼吸」のような行為です。