寂春

シリーズ作品

春が少しずつ、遠ざかってゆく。

波に揺れて風に揺れて、目的は愚か流れに任せて

ただそれだけで

満開の頃、既に終わりを知っている花びらたちははらりと身を委ねる

我々が夢中になってる間、自然界は無常にも時は過ぎてゆく

花びらたちが集い一つの形を作り上げていた。

華やかにもただただ波の流れに身を任せているだけ

春の終わり、初夏の色が芽吹いてきた頃

「そろそろそっちに行くね」そう花びらからは聞こえてきました

散った後はみんなで語り合おう。

またね

行ってきます さようなら。

なぜこの作品を制作したのか?


毎年春になると満開の桜が咲き誇り、とても美しくその姿に見とれます。ただ桜の花びらが美しいと思う瞬間は満開ではなく散ったその後だと思うのです。

散った後まで色を着け、その色が水面と共に遠ざかってゆく。その瞬間がとても日本らしく言葉にならないほどの感動を覚えます。

そこで、私の作風・表現の一部として、散った後の花びらの行方を集めたプロジェクトを作りたいと思いました。

このプロジェクトは一枚の作品ではなく複数枚で構成され、「散った桜」という1つの被写体に対して都度違う感情・情景で撮影したものになります。